2004年 7月 15日(木)

球技大会・その3 バトル開始?!

 不承不承、着替えを済ませた私は一緒に渡されていたマントを羽織る。

 衣装が純白なのに対してマントは、銀色。一体これは誰の趣味なのだろうか。そういえば以前・・・慎吾とある約束をした時に着た「女王様ルック」にかなり似た感じがするが、色が白い分今日のほうが可愛らしい感じがする。

 「・・・・ふん、悪くはないですね」

 何故か生徒会室の中に大きな姿見までが用意されているのに腹が立つが・・・それでも全身を映して見て、思った以上に私に似合っている事に安堵する。

 やはり、似合わない格好で人前には出る事は出来ませんからね。

 ヒールの高いブーツに、鞭を持った私は確かに「女王様」だ。この格好をしたからには、それなりの行動を取らなければ。

 そして、先に行った咲良や瑞樹も気になる。私も急いで体育館に行かねば、と廊下に出ると直哉が大きな黒い幕を持って立っていた。

 「何です?」

 「いや・・・あんまり、その姿で歩かれても困るだろう?とにかくこれで隠して、控え室の方に行ってくれ」

 「控え室って・・・そんなものまで用意してあるんですか?」

 「まぁ、一応・・・な。ほら、お前の親衛隊とかにそんな姿見られたら煩いだろ?」

 何だか取って付けた様な言い訳に聞こえるが・・・まぁ、良しとしておこう。確かに親衛隊は煩い。

 「でも私は咲良と瑞樹が見たいんですよ?」

 一応、言って見る。

 「大丈夫、モニターが付いてる」

 そう言うと直哉は、私の体にその黒い幕を巻き付けてさっさと歩き出す。一人で置いていかれても困るので、私も急いで後を追った。

 「しかし・・・煩いですね」

 体育館の脇を通り過ぎようとした時、中から物凄い歓声が聞こえてきた。一体、中では何がどうなっているのだろうか。

 「天音、こっちだ」

 成る程・・・・・控え室とは良くも言ったものです。大体育館の隣にある「体育教官室」まで取り上げるとは、実に雪紀らしい。

 「ここに座っていれば見れるから」

 直哉が、普段は教師が使っている椅子を持ってきてテレビの前に置く。

 スイッチをいれるとそのテレビの中に、体育館の中の様子が映り始めた。余りの事に、私は無言になってしまう。

 体育館のど真ん中に、巨大なブルーシートが敷かれてその上に、これまた立派なプロレスのリングが設えられていた。

 そのリングの中を丁度今、咲良が跳ねるようにして走っている。相手は・・・体の幅だけでも、咲良の倍はありそうな生徒だ。その生徒の太い腕が、咲良の首を捕まえようとして空を切る。

 それを見越していたかのように咲良はそのままロープに走り、反動を付けてその大男目掛けてキックを繰り出す。

 キックは見事に、ヒットした。しかし惜しむらくは、いくらヒットした所で咲良のような軽量級のキックでは大したダメージは与えられない。咲良はとうとう捕まり、羽交い絞めにされてしまう。

 「あ!危ないじゃないですか!何であんなに大きな男を連れてくるんです?!」

 私はテレビの画面を掴んで、がたがた言わせてしまう。

 「・・・・・仕方ないだろう。雪紀がプロレス同好会を巻き込んだんだから。じゃなかったら、こんな大掛かりな事出来るかよ」

 後ろで直哉がボソッと呟いた。

 そんなことより、早く咲良を助けなければ!モニターが映し出す咲良は、首を絞められとても苦しそうだ。

 その瞬間、白いものが咲良を締め上げている巨体にぶつかった。衝撃で咲良を締め上げている腕の力が緩んだらしく、素早く咲良が逃げ出す。

 瑞樹だった。一体どこから飛んできたのか・・・そう思っていると、モニターが「巻き戻し再生」を始めた。・・・雪紀の奴、放送部まで抱き込んでいたのか。

 いったい「参加料」としていくら取ったのだろう。この教官室を開けさせたのも、金がからんでいるに違いない。裏でトトカルチョでもやっているに決まってる。

 いや、違う。

 瑞樹を見なくては。瑞樹は、咲良の背中側のコーナーポストからダイブしていた。綺麗に足先から巨体に突っ込んでいっている。

 そしてモニターが通常の画面に切り替わった瞬間、今度は瑞樹が捕まっていた。

 足を捕まれ、逃げようにも逃げられない。残された片足で必死にストンピングを繰り出しているが、捕まえている巨体は平気な顔をしている。

 今度は咲良が助けに入ろうとしたが、それは出来なかった。リング外でもう一人の相手チームの人間に捕まっている。

 誰もが咲良と瑞樹の負けを感じた瞬間。突如、リング上に乱入者が現れた。・・・あの小さい姿は。

 「げっ、何やってんだよ!先生!!!」

 直哉が大慌てで教官室を飛び出して行った。

 そう、乱入者は祥太郎先生だった。