2004年 7月 19日(月)

球技大会その3・ちょうちょ?

 「だ〜れが、変態蝶々やねん!お前、ほんまに口の利き方知らんやっちゃな!」

 ・・・・・・・慎吾が、切れた。

 いや単純に、私に向かって投げられる言葉に嫉妬し過ぎての、隼人への八つ当たりなのはわかっているが。それでも、今までかなり長く付き合ってきたが、こんな風に「切れる」慎吾にはお目にかかった事がなかった。

 ひらり、と身のこなしも軽く慎吾はコーナーポストからリング上に舞い降りると、真っ直ぐ私の所へと歩いて来た。

 「・・・・・頼むわ、天音。ちょぉ、大人しぃしとってな?」

 言うが早いが、私をひょいと抱き上げると(しかもお姫様抱っこで)、咲良たちが待つコーナーへと行き、私をロープの外へと出してしまった。

 「何をするんですか!私はまだ・・・」

 まだ、遊び足りていない!と言おうとして、慎吾の大きな手のひらで口を押さえられる。

 「これ以上、俺に焼餅やかせんといてぇな。なんや、隼人だけやのうて、会場に居る男共全員・・・シバキ倒しとぅなるし?」

 慎吾にあるまじき「疲れた」様子で言われてしまい、私は仕方がなく文句を言うのを止めた。

 「・・・・・私に我慢をさせるんですからね。負けたら容赦しませんよ?」

 慎吾の耳元でそう囁くと、ぱぁっと慎吾の表情が明るくなる。

 「まかしとき!きっちり天音の敵はとったるさかいな!」

 本当に単純な男だ。それが慎吾らしいと言えばそうなのだが。

 私たちがごちゃごちゃしている間に、隼人はいつの間にかリングに上がっていた。腕を組んで、ロープに凭れている姿は直哉を彷彿とさせるが・・・私を睨み付けている目尻が薄っすらと赤いのが、笑える。



 「いつまで待たせるんだよ、変態蝶々」

 舌戦の口火を切ったのは隼人だった。

 「誰が変態や。正しい競泳選手の姿やないかい。ほら、言うてみぃ、俺のどこが変態なんや〜」

 自信満々に言い返す慎吾だが、十分に変態の域に入っていると思う・・・・・。

 

 「そんな、ぴちぴちしたビキニなんて今時誰が穿くんだよ!」
 「いや、穿くし?競技会じゃ流石に穿かへんけど〜、練習のときは穿くし」
 なぁ?と慎吾が会場に聞けば、そこかしこにいる水泳部の部員から「穿くぞ!」「部長、格好いい!」と声が返ってくる。

 良く見れば、リングサイドには水泳部員がひしめいている。

 「じゃ、じゃあ!その妙なキャップとゴーグルはなんだよ!!!そんなのも付けて練習すんのかよ!」

 金色に輝くスイミングキャップと、蝶を模したゴーグルは・・・・・。

 「使うぞ〜!」「うちの部長はなんでもありだ!」「部長は誰よりも早いから、何をしても許されるのだ!!!」

 またもリング下から声がかかる。慎吾は当たり前のような顔をして受け流しているが、隼人の方は心なしか顔が青ざめている気がする。

 


 「煩せぇ、外野!黙ってろ!!!こんな変態を部長だって崇めてるお前らも、変態だっ!!!や〜い、変態水泳部!!!」

 今度は水泳部の部員に、隼人は喧嘩を売り始めた、本当にどこまで子供なんだか。

 リング上とその下で、睨み合いが続いている。一体、いつになったら試合が始まるのだろう。