| 2004年 7月 21日(水) |
球技大会その3・白雪
「どうや?苦しいやろ。どんだけ暴れても、簡単には抜けられへんで〜?」
隼人の顔面と胴を締め上げながら慎吾はのんびりとした声で言った。さっき一瞬、私の方を見た慎吾は笑ったが・・・どうやら本気で隼人を仕留める気らしい。
「天音さん〜、隼人まずいよ!」
「落とされちゃいますよ?!」
私の背後から身を乗り出すようにして、咲良と瑞樹が叫んだ。
『落される?』
ああ・・・意識を失うという事か。
確かに。慎吾のあの筋肉のきっちり付いた腕や脚からはそう簡単には抜け出せないだろう。隼人の抵抗も、言われて見れば先刻よりも弱弱しくなっている気がしてくる。
ふいに反対のリングサイドを見れば、白雪が身を乗り出して隼人をみている。何とかタッチしようと手を伸ばしているが、私同様にその手は届かない。
・・・・・・・・まったく、今にも泣きそうな顔をして。
どちらかと言えば白雪はポーカーフェイスが常だが・・・。私の目には、隼人の事であんなに一生懸命になる白雪は全身で「好き」と言っているようにしか思えない。
なんとなく白雪を見ているのが切なくなって、私は咲良に耳打ちをした。
「わかりました!行ってきますね!!」
私の言葉を聞いた咲良は飛び跳ねるようにして反対側のリングサイドに居る、白雪の元へと走っていく。そして、白雪の耳元で私からの伝言を囁く。
白雪が私を見た。そして、ちいさく頷くと。
「隼人を、放して下さい!」
ロープを飛び越え、リングの中に乱入すると・・・隼人を締め付けている慎吾の元へと走って行き、その腕を剥がそうと腕にしがみ付いた。
・・・・・・・どうして、そんなにお行儀が良いのだろう。私は、乱入して蹴飛ばしていいですよ、と告げたのに。
しかし非力な?白雪が飛びついたところで慎吾が動じる訳も無い。
「なんや〜、白雪かぁ。そんなんしても無駄や。簡単には放したらんよ?」
そう言うと、更に腕に力を込める。少し離れた所から見ている私にもはっきり分かるほど、慎吾の二の腕の筋肉が盛り上がっているのがわかる。
隼人が落ちないのは・・・かろうじて、慎吾と自分の顔面の間に指を入れて剥がそうともがいているのと、慎吾が喉を絞めていないからでしかない。
「お願いですから放して下さい!このままじゃ、死んでしまいます!!」
白雪は必死の形相で縋る。
「そんな簡単に死なへんて〜。第一、隼人やし?」
「死にますよ!人間なんですから!!」
「大丈夫やって。俺、今まで誰か殺した事なんてないし?」
必死の白雪を慎吾は、のらりくらりとかわしている。
しかし。慎吾も大概、意地が悪い。どうやら隼人を締めたまま、白雪も構ってやろうという魂胆らしい。
「・・・・・・・・煩い、白・・・雪。あっち、行って・・・ろ・・・・・・」
苦しそうに喘ぎながらも隼人が口を挟んだ。
「隼人!?大丈夫?」
あ〜あ、泣きそうな顔をして・・・・・。
「平気・・・だか、ら・・・・・あっち行って、ろ・・・。変・・・・態がうつ・・・・る・・・・・」
「でもっ!隼人が!」
「誰が変態や!まだ、そんなん言うんか〜?」
慎吾の顔が引きつった。この状況でもまだ毒舌を吐く隼人に、少々疲れを感じたらしい。
いい加減、隼人も限界の様だ。
・・・・・・・・・・・白雪も私の指示通り、リングに入ってくれた事です。
「咲良、瑞樹。ロープを開けて下さい」
私は手に持った鞭を一振りすると、リングに入った。