| 2004年 7月 22日(木) |
球技大会その3・試合終了
「な・・・にっ?!えっ?!」
リングに入った私は素早く白雪の背後に回りこむと、鞭を使ってその細い首を絞めた。
「天音?!」
慎吾も驚いて私を見上げた。
ほんの少し腕の力が緩んだその隙を逃さず、隼人が腕の拘束から逃げ出してしまった。
「隼人!・・・離して、離して!」
慎吾の技から抜け出して、よろけている隼人を心配したのか白雪が私の腕から逃げ出そうと暴れ始めた。
隼人は慎吾に散々締め付けられていたせいで軽い酸欠を起こしているのか、ゆるく頭を振ったきり座り込んでしまった。すかさず慎吾が押さえ込もうとするのを、私は止める。
「慎吾」
「も〜、なんやの。こんな美味しい所でお預けかいな〜」
座り込んでしまったきり動かない隼人は、確かに美味しいご馳走だろう。しかし、今ここで慎吾に止めを刺されてしまっては私の作戦が台無しになってしまう。
「もっ、離してよっ!隼人、隼人っ!」
腕の中の白雪はまだ暴れている。きっと・・・普段ありえない隼人の姿に取り乱してしまったのだろう。
仕方なく首を絞めている鞭に、ほんの少しだけ力を入れると白雪にだけ聞こえるように私は耳元で言った。
「大人しく、なさい。早く隼人を助けて上げたいでしょう?」
「え・・・・・・?」
隼人、という言葉に白雪の動きがぴたりと止まる。
「いい子ですね、そうやって大人しくしていなさい。もう終わらせて上げますから」
「慎吾、隼人を立たせて下さい」
「え〜、なんでそんな事せなあかんの。このまま落してまったら簡単やん〜」
「・・・・・・・慎吾」
「ほいほい。ったく、しゃーないなぁ。ほら、立てるか?」
私の言葉に慎吾は嫌々ながらも従った。座り込んだ隼人を抱えるようにして腕を回して立たせる。
「隼人、こちらを見なさい」
私は腕の中の白雪が隼人から一番良く見える位置に移動した。
「・・・・ん、だよ・・・・・・・・」
私の声にようやく隼人が顔を上げる。その動きはひどくだるそうだった。しかし私の腕の中に捕らえられた白雪を見つけた途端に、隼人の目に力が戻る。
「っ・・・・・・・・何だよっ!そいつには関係ねぇだろっ!白雪を離せ!」
「おっと、待ちぃな。なんや急に、危ない奴やな〜」
私に飛び掛ろうとした隼人を、支えていた慎吾が止めてくれる。ナイスフォローですよ、慎吾。
「・・・・・もう、終わりにしませんか?隼人」
私は極上の笑顔でそう告げる。
「隼人が素直に負けを認めて・・・そうですね、私達の要求を呑むというなら今すぐにでも白雪君を放してあげますよ?」
「卑怯だぞ!天音さん!!」
隼人が牙をむき出しにして喚くが、そんなものは関係ない。
卑怯で結構。どんな手を使ってでも、二度と隼人が私たちに噛み付かない様にする事が目的なのだから。
「なにが、卑怯ですか。これは正式な取引です。・・・別に、最後まで戦ってもいいんですよ?隼人にそれだけの力が残っているのでしたら。でも、その様子ではそろそろ限界なんじゃないですか?」
いつの間にか慎吾は隼人を羽交い絞めにしていた。両腕を背中で押さえ込まれ、隼人の体で自由に動くのは足だけだ。
「それに白雪君が怪我をしても嫌なんでしょう?だったら、答えは一つです。認めなさい、負けを」
「うるせーっ!」
突然、隼人が叫んだ。
「分かったよ!俺の負けだ!!!だから、そいつを放せっ!」
足をばたばたしながら、隼人が言った。余程悔しいのか、目尻が真っ赤に染まっている。
「隼人!」
私が鞭を外した途端、白雪が隼人の元へと駆け寄った。
方法はどうであれ、隼人が負けを認めた事でこの試合も終わる。
さぁ、どんな事を約束させましょうか。まずは手始めに次期生徒会役員になって貰いましょうか。