| 2004年 7月 24日(土) |
任命式
終業式当日。
頂いた成績表はいつも通り満足いく成績だった。これならおばあさまにお見せしても恥ずかしくない。
10段階評価の成績表には、8以上の数字が綺麗に並んでいる。
理数系の少し苦手な私だから、その辺はまあ、ご愛嬌の数字だが、文系はもれなく最高得点だ。
もちろん、付属の大学へ進学するのに十分なラインをいっていることは間違いない。
直哉にも成績表を見せてもらったことがあるが、ヤツのは嫌味なくらい9と10しかなかった。しかも10の方が多い。
そこへいくと、まだ雪紀の方が可愛げがある。見せてもらったことはないのだが。
直哉によると、雪紀の成績は、直哉よりさらに10が多く、9はめったにないのだそうだ。
だが、なんでも器用にこなす直哉と違って、雪紀には大きな弱点がある。音楽だ。
テストが歌重視だと、とたんに面白いように成績が下がるそうである。
と言うことで、歌重視だった今回の成績、雪紀の成績表はいったいどんなことになっているのだろうか。
今度咲良にでも探りを入れさせよう…。
そんなことを考えながら生徒会室に向かっていると、大きなからだが懐いてきた。慎吾だ。
「天音〜。今回俺の成績、すごいんやで! ほら、見てぇな!」
いかにも得意そうにひらひら振りまわす成績表。私は大して期待もせず、それを受け取った。
…たしかに凄い。
体育が10なのは当たり前として、他のがすべて5だというのは…、これはいっそ難しいのではないのか。
そういえば、慎吾のテストの目標がすべて平均点だったと言うのを今ごろ思い出す。
「これは…たしかに凄いですね…。こんな成績、そうそうとれませんよ。」
「せやろ! 俺がこの学校の平均! 俺が指標や!」
なにか態度が偉そうである。
しかし…こんなお馬鹿が我が白鳳の平均か…。
何か釈然としない…。
生徒会室に行くと、すでにみんな揃っていて、その真中に隼人が偉そうにふんぞり返っていた。
「天音さん遅い! 呼びつけといてなんだよ!」
「ああ、送れずにちゃんと来ましたね。エライエライ。」
わざとからかうようにいってやると、面白いぐらい素直にぷうっと膨れる。
「で、わざわざ隼人まで呼び出して、一体なんだ。」
「なんだじゃありません。雪紀、あなたは永遠に高校に居座るつもりですか? 後任を選ぼうと思ったんですよ。」
「後任…、そうか、俺たちも秋には引退か…。」
正確には2学期の半ば頃だが。
「ちょお、待てよ! 後任って、生徒会役員って選挙で選ばれるんじゃなかったのかよ!」
「もちろん選挙はしますよ。生徒総会もお祭りみたいなもんですし。でもいいんですそんなの。はっきり言って出来レースです。」
「出来レースだあ!」
隼人が大声を出す。
だってそうではないか。学園の帝王とその腹心、その上女王?が推すのであれば、結果は目に見えている。
「そんなにビビらない。むろん1年のあなたに最初から会長をやれとは言いませんよ。会長は…。」
私は咲良を瑞樹を等分に見る。二人とも、いまいち押しが弱いのだな…。
「どっちがいいでしょう?」
「俺に聞くなよそんなこと。雪紀は咲良って言うに決まってるだろ。行動力なら咲良、計画力なら瑞樹だな。」
直哉は面倒くさそうに言う。こいつは自分の関わらないことには冷淡なヤツなのだ。
「俺は咲良を…。」
「どっちだって同じだそんなもん! じゃんけんで決めちまえ!」
言いかけた雪紀を遮って隼人がわめく。
しかし、それはなかなか妙案かもしれない。どっちが会長になるにしろ、二人は今まで通りくっついて相談し合いながらことを進めていくに違いないのだ。名目だけの会長なら、じゃんけんで決めても支障ないだろう。
ということで、厳選なじゃんけんの結果、咲良が会長、瑞樹が副会長になった。
「さて、白雪君は学年1番だそうですね。今回はいかがでした。」
「はっ、はい! なんとか…主席を保てました。」
「こいつは奨学金かかってるから、真剣なんだよ。」
おや、白雪君はこの学校には珍しい奨学生か。なるほど、なにか毛色が違うはずだ。
「それでは計算もお手のものですね。白雪君は会計に、それから隼人は書記に。」
「ちょっと待って天音先輩!」
急に瑞樹が声を上げた。
「俺、会計がいいです。もともと会計が好きでここに入ったんだし、俺が会計で、白雪君が書記で、隼人が副会長じゃ…だめですか?」
おや、私は隼人の下では咲良も瑞樹も動きにくいだろうと考えてこう言う人事にしたのだが、まさか瑞樹の方からそう言ってくれるとは。
「俺は計算しか出来ないし、それに隼人は…悔しいけど俺らの下にいるやつじゃないです。上のほうにいるのが似合ってます。まさかまだ会長は無理だろうけど。」
「そうですか、それでは…。」
「ちょっと待ったぁ!」
あっけに取られていた隼人が急にわめき出す。あれよあれよと人事を決められて、しかもそれが実現しそうだと知って慌てたのだろう。
「俺の意見も聞けよ! だいたいまだ入学して3ヶ月のやつにそんなポスト任すなよ!」
「おや、あなたは、直哉の後釜が勤められないのですか?」
隼人が詰まる。扱いやすいんだ、隼人は…。
「直哉だって1年の時からずっと勤め上げてますよ。へ〜、そうなんだ、直哉にできることが隼人には出来ないんだ〜。」
「わっ、わかったよっ! やりゃあいいんだろ、やりゃあっ!」
ほら、一丁あがり。
こうして、我々の引退後の人事は着々と決まりつつある。もっとも選挙を経るのだが、それはさっきも言った通りほぼ出来レースで、立候補さえすれば問題ない。
しかしそれにしても、これでは人員不足である。もう一人か二人…広大な学園を束ねる優秀な人員が欲しいところだ。
どこかに適当な人材はいないだろうか?