| 2004年 7月 31日(土) |
飲み会の顛末
ものすごく蒸し暑くなって目が醒めた。
見覚えのない合板の天井。しばし考え込んでやっと思い出した。
ここは慎吾の寮の部屋だ。暑いと思ったのも道理、慎吾のたくましい腕が私に背後から巻き付いている。
私の背中と慎吾の引き締まった腹が密着して…どうにもベタついた感じ…。
私は慌てて起き上がった。すでに昼近い時刻。ほかの寮生たちは不審がられてしまう。
だが、私の恐れは杞憂だったようだ。
急いでシャワーを浴びて昨日の飲み会会場となった部屋まで降りていってみると、部屋の中は凄いことになっていた。
一番中飲み明かしたのだろう。酒瓶やつまみなどが散乱する部屋のあちこちにマグロ状態の寮生が累々と…。
情けないうめき声が所々上がっている。どうやら二日酔いらしい。
「なんだよこいつら! だっらしねーなー!」
突然大声が響いて、その辺の酔っ払いがびくびくっと震える。
白雪君を従えた隼人が仁王立ちになっていて…私の顔を見ていきなり赤面した。
……なんだその反応は…!
「…天音さんさあ、ちょっと…。」
隼人は、二日酔いどもの為に持ってきてやったのであろうペットボトルいりの水を床にどかどか置いた。意外と面倒見がいいんだな、こいつは…。
そして、いきなり私の腕を掴むと大きな体を折る。白雪の目を気にしているのか?
「あのさ…、筋肉蝶々と仲がいいのはいいんだけどさ、…場所を考えてよ。…声が、………聞こえんだよ。」
ひそひそと声を潜める。しきりにちらちらと視線を飛ばしては、背後の白雪君を気にしているようだ。
…そういえば、慎吾の部屋は最上階で、夕べ隼人を置き去りにしてきた屋上の真下あたりだったな。
………………そう言うことか。
………さすがの私もちょっと言葉に詰まっちゃうな。
「天音センパイ、夕べ………なに? 隼人?」
いきなり白雪君が話しかけてきて、隼人は50センチも飛びあがった。
私を見たよりさらに真っ赤な顔で慌てふためいている。
「おっ、おまっ、夕べの天音さんと筋肉蝶々のこと…っ!」
「そう言えば隼人も途中でフケちゃったんだよね。」
白雪君は可愛らしい鼻の頭に皺を寄せた。
「夕べあれから大変だったんだから。みんなすごく飲むからお酒は足りなくなっちゃうし。買い出し行かされて、おつまみの追加も作って。
それでもって王様ゲームに巻き込まれちゃってもう大変。」
「なっ、なにっ、王様ゲーム!」
隼人はまた顔色を変えた。信号機みたいな奴だな。
「そんなゲームでっ、白雪、なにか妙なこと…!」
「妙なことって、どじょうすくいをやらされただけだよ。ほっかむりと5円玉で。」
「どじょうすくい…。それじゃあ、天音さんと筋肉蝶々のことは…。」
「だからどうしてたんですかって聞こうとしてたところ。夕べは全然姿が見えなくて、俺心配してたんだから。…隼人も。」
隼人は明らかに安心したように肩を落としてため息をついた。
なんだか可愛らしいところもあるな。隼人は。
「ずいぶん可愛いらしいじゃありませんか。」
からかうように声を掛けると、隼人はまた顔を赤らめて、嫌そうに私を見下ろした。
「そのうち指南してあげますよ。あなたの可愛い白雪君とどうしたらいいのか。」
「うっ、うるせー!」
そのときは直哉も一緒がいいのかも。私は不甲斐ない兄貴を思い出してちょっと鼻で笑った。
「おおっ、天音、いたいた。なんや、隼人と白雪も一緒か。他のみんなは…何や、だらしないなあ。」
慎吾が現れた。腕に大きなスイカを抱えている。
「俺、もう腹へってん。こんな時間やし、これからみんなでスイカ割りしよ。こおーんなでかいスイカ、5つもあるねんで。おばあさまからの差し入れや。」
おばあさまが…さては私がガマン大会で厨房に篭っているときに届けてくださったに違いない。
「夕べから氷水で冷やしたし。元気のあるもんついてきーや。屋上でやるで!
隼人! 当然くるやろ! また勝負や!」
「おう! 負けるか! 筋肉蝶々!」
アレで以外と慎吾も隼人を気に入っているようだ。
そして私たちは屋上へ移動した。