| 2004年 7月 9日(金) |
極上の宝石
今日でようやく、私の試験が終わった。
昨日の内に全ての教科が終わっていた慎吾は、今日一日プールにいた様子だ。
慎吾が言っていた通り、秋の競技会に向けて体を作り始めたのだろう。普段はそれほど真剣に泳いでいる感じがしない慎吾だが、競技会となると俄然燃える性質らしい。
元来、負けず嫌いな所がある慎吾はやはり、「負けたくない」と思うのだろう。
『明日はずっとプールにおるから、試験終わったら見に来てや〜』
そんな風に言って居たのを思い出し、私はプールに足を向ける事にした。
「申し訳ありませんが、私は用事が有るので少し席を外します」
今度の球技大会に向けて細かい仕事をしている雪紀たちにそう告げると、私は席を立った。
雪紀は私の方をちらりと見ただけで、何も言わない。
咲良と瑞樹はどことなく、不安そうな顔をして私を見ている。
直哉は・・・・・直哉は、慎吾同様昨日で御役御免となった祥太郎先生の近くに張り付いて、何だかんだと急がしそうに手伝っている。
「では、行って来ます」
雪紀の態度が少々気になったが、慎吾が待っていると思うといちいちそんな事に気を取られてはいられない。
通常この時期は、屋外のプールで泳いでいる慎吾だがどうも今日は違ったらしい。
『そろそろ本気モードに入らなあかんもん。いくら俺でも、そんな簡単に体作れんし。それに・・・外で泳いどったら、ギャラリーが煩そうてかなわんわ』
そんなものだろうか。いつもおちゃらけた慎吾が、そんな事を考えているなんて私は考えてもなかった。
「ああ、いましたね」
階段状になっている屋内プールのギャラリーに行くと、水の中を思う様自由に泳ぎまわっている慎吾を見ることが出来た。
私はそこの最前列に座る。私以外にギャラリーはいなかったが別に気にならない。
それどころか、反対に私がそれだけ「慎吾の特別」なのだと感じられて、人知れず優越感に浸ってしまう。
プールには慎吾のほか数人の部員と、コーチが居た。水泳部全体としては人数が少ないが恐らく競技会に出場できる部員しか、ここにはいないのだろう。
ふいに慎吾がこちらを向いた。私に向かって、白い歯を見せて笑いかける。
私はそれに小さく手を振る事で答えた。
「次、慎吾!100のダッシュ10本!」
「うぃ〜すっ!」
プールサイドにコーチの声が響いた。その声に従って慎吾が泳ぎだす。どうやら自由形を泳ぐらしい。
慎吾の専門のバタフライが見れなかった事に、私は少し残念な気持ちになる。
けれど・・・・・すぐに私は泳ぐ慎吾に夢中になった。
どれだけ見ていても飽きない、ダイナミックで綺麗なフォーム。慎吾が水を掻くたびにその体はぐんぐん前に進むし、キックで舞い上がる水飛沫は陽の光を反射してきらきら輝いている。
どれ程高価な宝石よりも、私の瞳にそれは美しく映って。こんなにも綺麗なものを慎吾に与えてもらえる私は、なんて幸せなのだろう。