2004年 8月 19日(木)

足らない・・・・・

 さて、本当に何を持って行けばいいのだろうか。
 今頃から行って、日帰りという事はあり得ないとは思うのだが。雪紀以下、おそらく生徒会全員が参加することになるだろうこの旅行に日帰りなど考えられない。
 しかし泊まるにしても、一体何泊なのだろう。
 どこに泊まるのだろう。

 やはり、慎吾に電話をして聞いたほうがいいかも知れない。
 そう思った私は慎吾の携帯に電話をかけた。

 ・・・・・・・・通じない。

 二度、三度かけるがどうやっても通じない。
 電源が入ってない訳ではないし、電波が届かない訳でもない。ただ、ツーツーとお話中の音が、延々とするだけなのだ。

 こんな時間に一体どこに電話をしているのか、後で問いたださなくては。

 仕方なく、今度は咲良の携帯に電話をかける。しかしこちらも不通。

 雪紀も、通じない。瑞樹も通じない。

 そして直哉にすら通じないのは、どうしてなのだろうか。もしかして私は「狐」にでも騙されているのだろうか。

 思わず自分で自分の頬を抓ってみた。
 ・・・・・・・・・痛い。という事は、これは夢ではないのだ。

 仕方がないので私は思いつくまま、旅行の支度を続けた。
 咲良に言われた通り、日焼け止めも入れたし水着も持った。けれど恐らく私がこの水着を着る事はないだろう。
 だって、絶対に嫌なのだ。お盆明けのクラゲの海に入るのは。
 
 悪戦苦闘の末、何とか荷物を纏め終えた頃電話が鳴った。
 今度は間違いなく慎吾からの電話だった。

 『もしも〜し、天音?おはようさん〜。荷物は出来たか?』
 「出来ましたよ、たった今・・・・・」

 何でこんなに朝からテンションが高いのだ、慎吾は。余りの声の大きさに私は思わず携帯を耳から遠ざけてしまう。

 『ほんなら丁度ええな!たった今、天音の家の前に到着や〜。荷物持って出てきてぇな』

 その言葉に窓から覗けば。確かに車が一台、家の前に止まっている。
 ワゴンタイプの車だから、やはり大人数での移動なのだろう。

「わかりました、今出ますから」

 そう言って私は一度、電話を切った。荷物を手に、おばあさまと母に挨拶をして玄関へと向かうとそこにはちゃっかりと慎吾の姿があった。

 「遅ぅなってスマンかったな。荷物、そんだけか?」
 言うなり、慎吾は私の手の荷物を当たり前のように受け取る。

 「ほな、天音をお借りします。向こうに着いたら連絡入れさして貰いますんで、どうぞご心配なさらんと」
 私の背後にいたおばあさまに、ぺこりと頭を下げる。

 「道中お気を付けて。皆さんで楽しんでいらっしゃいね?」

 おばあさまは玄関の外まで私達を送り出し、車の外にいた佐伯氏にも頭を下げた。

 
 「慎吾、早くそれをこっちに寄越せ」
 トランクを開けながらそう言う雪紀の態度は、相変わらず大きい。

 「ほんなら荷物積んでしまうさかい、天音は先に車に乗っといてな」

 ワゴンの後部ドアを開けると、慎吾は私を車内に押し込む。

 「天音さん、おはようございます〜」
 「お久しぶりです〜。もうすぐ夏休み終わっちゃいますね〜」

 案の定、子犬コンビが飛びつかんばかりの勢いで口々に挨拶をしてくる。

 「あ、あの・・・俺まで一緒で済みません・・・・・」

 おや、この声は。

 咲良と瑞樹に隠れるようにして、白雪も居た。

 「えー!何で謝るの〜!」
 「そうだよ、白雪くんだって秋には生徒会に入るんだら一緒に行って当然だよ!」
 
 その通り。私の言いたい事は子犬コンビが見事に代弁してくれたようだ。先輩二人にそう言われ、心なしか嬉しそうな顔をして白雪に私も嬉しくなる。
 あんな過去を聞いてしまった以上、白鳳で白雪が楽しく生活できたらいいな、と私は心から願っているのだ。
 それにしても・・・・・。

 何だか、人数が足りないような。

 白雪が居るというのに、隼人の姿もなければ祥太郎先生と直哉の姿も見えない。




 「咲良、何で・・・・・」

 「お待たせ〜、ほな出発や!」

 どうして人数が足りないのか、と咲良に聞こうとした所で雪紀と慎吾が乗り込んできた。
 
 もしかして、これから迎えに回るのだろうか。