2004年 9月 13日(月)

三本線

 駄目だ、気になる・・・・・。
 どうしても、気になるのだ。目を向けてはいけない、と分かってはいても・・・その、何といえばいいのか。
 見てしまうというものはあるじゃないか。
 
 私は先刻から視界に端に入る、薄ら赤い三本線が気になって仕方がない。
 だってそれは・・・・雪紀の、頬にあるのだから。


 「何だ、天音。さっきからじろじろと。言いたい事があるんならはっきり言えばいいじゃないか」
 
 私の視線に気が付いた雪紀が、しっかり座った目でこちらを睨んでいる。
 声にもはっきりと、不機嫌さが滲み出ている。
 ん?今・・・言いたい事があるなら、はっきり言えと雪紀は言ったのだな。
 では、はっきりと言わせて頂こう。

 「あなたのその、頬の傷・・・一体、どうしたんですか?」

 気になることはさっさと聞くに限る。

 「何でも、ない」
 さっきより更に低い声が返ってくる。
 「雪紀が聞きたいことがあるなら言えっていったんじゃないですか」
 「言ったが、答えるとは言ってない」

 語るに、落ちたな。言いたくないと言う事は、裏を返せば「言えない」の間違いじゃないだろうか、雪紀の場合。
 例えば・・・浮気したとか。浮気したとか、浮気したとか。
 雪紀の場合、かなり下半身の人格に問題があったからな。咲良と付き合いだす以前の話だが。

 
 「天音・・・そんなに知りたいなら俺が、理由を教えてやろうか?」
 いつの間に来たのか、直哉が嬉しそうな顔をして背後に立っていた。
 直哉の登場に雪紀の顔色が変わる。
 
 「直哉!余計な事を言うな!」
 「いいえ!さっさと教えて下さい!」

 ほとんど同時に発せられた私と雪紀の言葉に、直哉が益々面白そうな顔をする。
 そして私の方を向くと。
 「教えてやるよ、天音。あの三本線はな・・・」
 「直哉!いいのか!俺も、言うぞ?!」
 雪紀が必死の形相で直哉に食い下がる。
 ・・・おや?直哉の顔色が、変わったぞ。

 「・・・天音、雪紀は・・・・・ネコに・・・」
 「野良猫に引っ掻かれたんだ。そうだな?直哉」
 「・・・・・そう言うことだ」

 にこりともしないで、二人は答える。全く、見事なくらい呼吸が合うな・・・こいつらは。

 この二人。また何か、秘密があるらしい。
 後で子犬たちに聞いておこう。それと、祥太郎先生にも。