| 2004年 9月 15日(水) |
喧騒
「おい、さっきの奴・・・何なんだよ?!」
戻ってくるなり、隼人が気炎を上げた。あれ程、生徒会を馬鹿にしていたのに、いつの間にか・・・隼人がここの空気に溶け込んでいる。
本人は全く気が付いていないようだが。
「だいたい!お前がそんなにちびっちゃくて、へらへらしてるからあんな奴に馬鹿にされるんだろ!」
びしっ、と指を突きつけられて咲良は目を点にしている。
「二年の主席だかなんだか知らねぇけど、お前が成績でもなんでもあいつに勝てば、あんな事言われないだろうが」
鼻息も荒く捲くし立てる隼人の後ろで、白雪が心配そうにうろうろしている。しかし、言われ放題の咲良は・・・案外平気な顔だ。
「ありがとね、隼人。それって一応、俺の事心配してくれてるんだよね〜」
「だっ!誰がだっ!馬鹿かよ、お前!心配してんのはお前の事じゃなくって、俺の事!いくら何でもあいつが会長になんてなったら俺は、生徒会なんて入らないからな!」
雪紀を骨抜きにしている「咲良スマイル」全開で笑いかけられ、柄にも無く隼人が照れる。
「でも、咲良。彼は一体何を考えているのでしょう」
私は手元のお茶を一口飲むと、咲良の方を向いた。
「ん〜、わかんない」
「・・・わかんないって、一応・・・同級生でしょう」
「でも、クラス一緒になった事ないし」
俺、興味ない人間って基本的に視界に入らないから〜。
咲良はへらり、と答える。
「戻ったぞ」
ドアが開き、雪紀達が帰ってきた。
後ろにいる直哉が手に何か書類のようなものを持っている。その後ろからは瑞樹が・・・紙袋を下げて、戻って来た。
「何ですか、それは」
胡散臭そうな目を向けた私のまん前に、ほらよ、と直哉が書類を投げ出す。
なるほど、これは。あの主席君の調査書と言う訳だな。
「で、瑞樹?その袋は?」
待ってましたとばかりに、瑞樹は私の前で袋の中身をぶちまけた。
「も〜、アイツ本当に頭に来る!見てくださいよ〜、天音先輩!これっ、これ全部!今の生徒会に対して意見書ですよ!」
普段は大人しめな瑞樹にあるまじき、激高した様子に私は眉根を寄せる。
ちらりと見たその意見書なるものは・・・単なる誹謗中傷でしか、ない。
「あ、あの・・・。彼の言ってる事って・・・物凄く、矛盾してると思うんですけど・・・」
どうしたものか、と唸っていると白雪が「差し出がましくてごめんなさい・・・」と言って口を挟んできた。
「白雪?矛盾って・・・・・」
「え?ですから。現会長である住園先輩がハーレムを作って、この学園の美少年を独占してるって言ってましたけど。でもそれって、だからこそ生徒会に居ればある意味安心って事ですよね?」
確かに。
咲良は雪紀のお手付きだし、瑞樹はカノンのお手付きだ。
白雪に関しては、まぁ・・・隼人が守っているように見えるだろうし、正太郎先生には白鳳の守護神が付いている。
そして私には、慎吾が。
「生徒会の役員になっちゃったら、一般の生徒はおいそれとは手を出せないって事なんです。僕らの、生徒会に対しての認識は」
外部生らしい、素直な意見に私達は耳を傾ける。
「彼は現生徒会に変わって、学園を開放して・・・美少年を皆で分け合う、なんて言ってましたけど・・・それって・・・」
「えー!俺達、雪紀さんが卒業しちゃったら穴だらけって事?!」
「咲良!?」
咲良が発した余りにも下世話な物言いに、瑞樹が目を白黒させている。
白雪などは真っ赤になって俯いてしまった。
しかし、私には白雪が何を言いたいのか分かった。
そして隼人も理解したのだろう。
一瞬心配そうに咲良を見やり、次の瞬間には目に強い光を湛えた。