| 2004年 9月 16日(木) |
隠密?
「なぁ、天音さん。どうして雪紀さんや兄貴は・・・今回の事、本腰入れて何とかしないんだよ?!」
放課後、生徒会室へ向かう途中で私は隼人に捕まってしまった。
どうやら隼人は今回の「対抗馬」の一件で、随分と咲良に肩入れしている様だ。
思った通り、隼人は随分と面倒見がいいらしい。もしかしたら直哉よりも余程、物事の受け皿は大きいのかもしれない。
「どうしてと言われても」
私はあえて、言葉を濁す。
「だってあいつは、その・・・雪紀さんの、相手なんだろう?」
周囲を憚るように潜められた声は、隼人には不似合いで思わず笑ってしまう。よくよく見れば耳まで赤くなっている。
全くお子様だ。
直哉なんか、隼人と同じ年にはこんな会話にびくともしなかったぞ。
「なのに何で・・・助けて、やらないんだよ」
「・・・そんなに咲良が心配ですか?」
赤くなったりどもったりする隼人が面白くて、私は少々構う事に決めた。
「な!だっ、誰がっ!昨日も言ったじゃないかっ!」
・・・・そんなに真剣に反応しなくても。
「俺は、単に!あいつ以外が会長なら、副会長はやりたくないって言ってるだけじゃんか!」
だから。
そういう気持ちを「心配」と言うのでは?
「それに・・・・・白雪の、事もあるし・・・・・」
白雪、と呟いた隼人の声に甘いものが混じる。
「せっかく白雪が、居心地のいい場所見つけたんだ。あいつ、結構人見知りするから・・・あんな奴らでも、白雪が懐いてるし」
横を向いて赤い顔をしながら言っても、説得力はないのですけれどね。
けれど、隼人が隼人なりに咲良を「会長」として守っていくつもりだった事は、充分に伝わってくる。
「じゃぁ、隼人がどうにかすればいいじゃないですか。基本的に会長を補佐するのは副会長の役目でしょう?」
私のこの言葉は、隼人にすれば冷たく取れるものだったかも知れない。
「何だよ、それ・・・。俺に勝手にしろって事か?!」
思った通り隼人が噛み付いてきた。・・・本当に喜怒哀楽が激しいな、このお子様は。
「そう取って貰ってかまいませんよ」
「・・・見損なったぜ、天音さん・・・。それに雪紀さんも、兄貴もだ!自分達は3年生でもうすぐ引退するからって、あいつとか、生徒会がどうなっちゃっても良いって言うのかよ?!」
感情も顕わに、私を睨みつけてくる隼人の視線。
本当は、私だって咲良を助けてやりたい。いくらでも策はある。
だが雪紀が首を縦に振らないのだ。そして、直哉も。
奴らに言わせれば『この程度のトラブルの処理も出来ないようであれば、今後学園を纏めていく事は出来ない』と言うことらしい。
至極ごもっとも、な意見ではある。
でも。
「本当に、咲良を助けたい?」
そう問いかけた私に『当たり前だろう』と隼人が答える。
「そうですか・・・それでしたら」
ちょい、と指先で隼人を呼び寄せると私はその耳元で囁いた。
「隼人・・・隠密ごっこをしてみませんか?」