2004年 9月 17日(金)

当然の結末?

 いよいよ明日、生徒会役員を決める総選挙が行われる。
 未だかつて前例のない、対抗馬の登場に学園内は浮き足立っている。
 それにしても、面白くないのは「横暴の会」のあいつだ。2年の主席かなにか知らないが、咲良に向ける視線が厭らしい。そして、自分自身の周囲に常に体育会系の生徒を侍らせている。
 
 前にも言ったが、あいつが何を考えて生徒会長に立候補したのか・・・手に取るように分かってしまう。
 ただ、狙われている咲良本人が全く気にしていないのが、救いと言えば救いなのだが。
 それにしても雪紀や直哉が、何一つ手助けをしようとしない事自体が私には不可思議だった。
 その事を隼人に突かれて・・・思わず「隠密になりませんか?」と言ってしまったのだが。予想に反して隼人はあっさりと承諾した。

 とにかく明日の選挙まで、咲良が無事でいてくれればいいのだ。


 「天音先輩っ!」
 昼休みを迎えた教室のドアの所で、白雪が私を呼んでいる。突然現れた美貌の下級生に、クラスに残っていた何人かの生徒の目が釘付けになる。
 だが、私の名前を呼んでいることもあって・・・彼らが白雪に対して不穏な動きをする事はない。
 今更ながらに思うが、これが「生徒会役員」とその「お気に入り」としての特権なのか?

 「大変なんです!早く、来て下さい!」
 肩を大きく上下させて息をしながら、白雪が再び私の名前を呼んだ。流石に・・・3年生の教室の中までは入ってはこれないか。

 「どうしたんですか?」
 常にない白雪の慌てた様子に、内心は私も焦っていた。だが、今それを顔に出してはいけないだろう。
 「隼人が、天音先輩を呼んで来いって・・・あいつが、屋上に・・・っ!」
 「咲良を呼び出しでもしたんですか?!」
 私の顔色も変わる。やはり思った通り、こういう手段に出てきたか。
 ・・・・・隼人に、見張らせておいて本当に良かった・・・・・。

 「屋上ですね?・・・行きますよ」
 私が言うと、白雪も頷いた。



 
 屋上へと続く階段の踊り場に、何やら白い物体が転がっていた。
 「あ、こいつ・・・・・・」
 どうやら白雪には見覚えがあるらしい。
 「さっき、奴らと一緒にいましたよ」
 成る程。ここで見張りを任されていたのか。確かに、体型から見れば柔道部の部員のようだ。
 白目を向いて昏倒している様子から、恐らくは隼人にやられたのだと察する。・・・隼人・・・流石は直哉の弟と言うべきか?
 その邪魔な巨体を乗り越えて、屋上へと続くドアを開ける。

 ・・・・・とても、静かだった。
 何人かの生徒がお腹の辺りを押さえたり、顎の辺りを押さえたりしながら・・・屋上のコンクリートの上でもがいている。
 
 「あ、天音さん!どうしてここに?」
 私の姿に気が付いた咲良が嬉しそうに駆け寄って来た。
 ・・・外傷は、なし。制服も少々乱れてはいても・・・特別、何か酷い事をされた様子は伺えない。
 おや?おでこのあたりがほんの少し赤くなっているような。
 「咲良・・・ここ、どうかしましたか?」
 赤くなっている辺りを指で軽く押すと、咲良は「痛いよ天音さん、止めて〜」と、体を捻って逃げ出す。
 そんな咲良を、隼人が呆然と見ていた。

 「隼人?どうかしましたか?・・・ご苦労様でした」
 私は隼人に近づくと、労いの言葉をかけた。きっと、このコンクリートの上でもがいている連中は、隼人が始末してくれたのだろう。
 そう思っての労いだったのだが。

 「・・・違う、俺じゃない・・・・・」
 「え?」
 隼人がぼそぼそと、何かを言っている。よくよく耳を澄ましてみれば「嘘だろ」とか「詐欺だ」とか「汚ねぇ・・・」とか。
 咲良を見ながら呟いているのだ。
 「もしかして・・・これは、咲良が?」
 信じられない思いで、隼人に聞いてみれば・・・答えは、是。


 その日の内に対抗馬達は立候補を取り下げた。