| 2004年 9月 22日(水) |
ご挨拶
新役員の挨拶の一番手は、会計担当の瑞樹だった。
役職は今まで通りなので、とりたてて抱負などは言う事はないだろうに。
それでも、今までの瑞樹らしからぬはっきりとした口調で挨拶に望んだ。
どちらかと言えば大人しい・・・悪く言えば「引っ込みじあん」と周囲から見られていた瑞樹だが、なかなかどうして。
それは立派な挨拶だった。尤も、私達生徒会役員の前では本来の闊達な性格を散々披露してくれていたので、私は特別驚いたりはしなかったが。
一般の生徒達はそうではなかった。
大勢の生徒を前にして『新会長の下、きちんとした会計業務をこなし皆さんがより良い学園生活を送れるように尽力します』と言い切った瑞樹を、割れんばかりの拍手が包む。
気をつけて見ていると、あちらこちらで生徒達が顔を寄せ合い・・・何やら内緒話をしている。
今更ながらに、瑞樹の魅力に気が付いたといった所だろう。
二番手は、白雪だった。
白雪は外見こそは大人しやかだが、常に行動を共にしている隼人の評判もあってか・・・意外にも全校生徒に広く顔と名前を知られている。
挨拶は1年生らしい、素直な希望に満ちたものだった。
ただ、書記と文化部長を兼任する旨を伝えたときに一部の文化部の生徒達からは歓声が上がった。
それは、そうだろう。
文化部の部長達は他の生徒に比べて生徒会の文化部長との関わりが非常に多いのだからな。遠からず、白雪は私と同じように畏怖と憧れを込めた視線を向けられる様になるだろう。
・・・・・・・・その時の、隼人の態度が見てみたいものだな。隼人は、存外執着心が強そうだ。
きっと、面白い事になるに違いない。
次いで、隼人の挨拶だ。こいつはまったく・・・壇上に上がってすぐに、全校生徒に対して睨みを効かす奴があるか。
隼人らしいと言えば、これ以上ないほどに隼人らしいが。
挨拶というよりは、お礼参りの様な気がするのは私だけだろうか。
そう思って直哉を横目で見れば、眉間に深い縦皺を刻んでいる。
だが、咲良の補佐としては隼人以上の番犬はいないだろう。それなりに考えての、隼人の態度だと思いたい。
そして、いよいよ咲良の挨拶が始まった。
きちんと背筋を伸ばして、壇上から全校生徒を見渡す。
「先日の選挙で、会長に選ばれた・・・花園咲良です。今までの書記とは比べ物にならないほどの重責だとは思いますが・・・白鳳の生徒会長の名前に負けぬよう、そして歴代の会長の名前を汚さぬよう務めて行きたいと思っています。
どうか、私が職務を全う出来ますように全校生徒の皆さんのお力を、貸して下さい」
そう言って、深々と頭を下げた。
成る程、咲良らしい挨拶だと思う。雪紀は、入学当初から並ぶ者などないカリスマ性を持っていたが・・・咲良は違う。
ましてや外部からの編入生だ。
自分の力を認め、他に助力を求めるのも上に立つ人間には必要な資質だと私は思っている。
雪紀と咲良は、違う人間なのだから。
無理にその真似をしようとすればするほど、歪みは出てくる。
咲良はその事を、きちんと理解しているらしい。
会場からは、暖かな拍手が咲良に向けられている。
咲良は誇らしげに胸を張って立っている。そして、そんな咲良を見る雪紀も・・・とても満足そうな顔をしていた。
私はなんだか、卒業してしまうのが悔しくなってしまった。
咲良たちがどんな風に学園を纏め上げて行くのか、この目で見てみたい。