2004年 9月 4日(土)

気分はスパイ?

 今日は二学期が始まってから最初の土曜日だ。
 当然学校は休み。そして、これもまた当たり前のような顔をして慎吾は私の部屋に夕べから「お泊り」をしている。

 慎吾はかなり上機嫌だ。
 それもその筈。
 先日、慎吾から持たされた「お土産」は我が家の女性陣にたいそう評判が良かった。
 特におばあさま。
 以前に突然『あさりが食べたいわぁ』と仰った事を、覚えているだろうか。実はかなり・・・おばあさまは海産物がお好きなのだ。
 故に・・・慎吾から貰った「伊勢えび」や「魚」「とこぶし」(貝の名前だ)は、その日の夕餉の食卓を賑わわせ。
 ますます、慎吾の評判は上々なのだ。

 そして。昨夜の食卓は凄かった。まさに、慎吾の好物の「大洪水」といった所か。
 下にも置かぬその扱いに、慎吾は戸惑いながらも、それでも嬉しそうに・・・残さず、食べたが。
 私から見れば慎吾がまるで「入り婿」の様に扱われていて、少々気恥ずかしかったりも・・・する。


 そして今日は久々に慎吾と一緒に秋物の洋服を買いに出かける事になっていた。
 私はいつも通り、行きつけの店で適当に見繕って貰ってそれを買う。
 久々の買い物とあって、思ったよりも荷物が多くなってしまったが、それを慎吾が当たり前の様に持つ。
 別に私とて持てない訳ではなかったが、ここは一つ慎吾に甘える事にする。
 そしてお昼を採るために・・・今度は慎吾のリクエストでイタリアンの店に向かう。
 そこで見たものは。

 「おっ!天音!!見たってや!!!」
 慎吾が何かを見つけ、指を指す。 
 「なんですか、慎吾。子供じゃないのですから、指をさすなんてそんな行儀の悪い・・・・・。いえ、良く、見つけましたね」
 慎吾が指し示した方向には、何と。
 直哉と祥太郎先生がいるではないか!
 二人とも、妙に嬉しそうに、にこやかに談笑している。向こうはまだ、私達に気が付いていないらしい。
 「慎吾、お昼は後です」 
 「え〜!なんでや〜。俺、もう腹ぺこぺこや〜」
 店に入る直前で、私に襟首を掴まれた慎吾がごねる。
 「何を言ってるんですか。夕べもあんなに食べて、今朝だってしっかりとお替りまでして食べたじゃないですか」
 「そんなん〜。もう消化したに決まっとるやん。いくら夕べ沢山食べた言うたって・・・その後、きっちりカロリー消費したやんか!」
 「慎吾!」
 私は慌てて慎吾の口を塞ぐ。
 あぶない、あぶない。この筋肉お馬鹿は往来で、何を言い出すかと思えば!
 「後からもっと美味しいものを食べさせてあげますから!早くしないと見失ってしまうじゃありませんか!」
 「・・・・・見失う?」
 一瞬、私の言った事が理解できなかったらしく慎吾は考えこんだ。そして。
 「天音〜。ほんま、いけずなやっちゃなぁ〜」
 にんまりと笑う。
 どうやら私と慎吾の意見は合致したらしい。


 「ほな、見つからんように上手くつけていかんとな!」
 荷物を片手に、もう一方の手は私の手を引っ張って・・・・・。
 私達は雑踏の中、直哉と祥太郎先生の姿を追った。