| 2005年 1月 28日(金) |
おいといて。
まだ勉強をするという直哉を図書室へ残して、私は隼人と共に生徒会室へと向かった。
誰かいるだろうと思ったのに、どうした事か。
私と隼人以外、誰も来ていないではないか。
・・・・・・・・・まぁ、咲良はきっと雪紀にでも捕まっているのだろう。
この間の祥太郎先生の発言以来、相当に機嫌が悪かったからな。
直哉に負けるつもりはない、と言い張ったのだからそれこそ寝る間も惜しんで、机に噛り付いているに違い無い。
それでも生来、短気な雪紀の事。
咲良でも近くに置いておいて、時折憂さ晴らしでもしない事には済まないのだろう。
きっと泣かされる事間違いなし、の咲良に私は心の中で手を合わせた。
「でも、実際はどうするつもりなんですか?」
「どうするって、何がだよ」
私手ずからお茶を入れてやり、隼人と向かい合わせにソファーに腰を降ろした。
何がって、決まっているじゃないですか。
「あなた、今度の試験どうするんですか」
「あ〜」
とことん面倒くさいと言った様子で隼人はソファーにでろん、と寝そべってしまった。
・・・・・行儀の悪い。
「どうするもこうするも。兄貴があんな事言い出すなんて思ってなかったもんなぁ」
がりがりと頭を掻いて、隼人は顔を顰める。
「だって、天音さんだってそう思うだろう?」
「確かに」
「万年2番だって、狙ってなきゃ取れないんだぜ?それを難なくこなすから、兄貴は格好いいってのにさー」
祥太郎の奴。
最後の祥太郎先生の名前は、一応私を憚ってか小声ではあったがしっかり聞こえています。
「私も驚きましたけれどね。まさか祥太郎先生があんな事を仰るなんて」
「だろっ!そうだ、みんなあいつが悪いんだ!」
勢い、隼人は体を起すと私との間にあるテーブルに身を乗り出してくる。
「祥太郎だよ、祥太郎!あいつが全部悪いんだ!あいつのせいで俺まで悩む羽目になっちまったんだ!」
「隼人・・・・・・・・・・」
「だってよぅ、俺だって兄貴の真似して2番を取り続けるのにすんげぇ、頑張って来たんだぜ?!」
確かにそうだろう。
「それにさ、白鳳に入って白雪なんかに会っちゃってさ」
なんか?
「あいつは奨学生だし、だったら成績は良いに越した事はないし!俺は2番以外取るつもりはなかったから、誰かが白雪を抜くなんて無理に決まってるし!」
「凄い自信ですね」
「あ?あったりまえだろ?兄貴の真似すんだから、いくら俺だってそれなりには頑張ってるっつーの」
「で?」
「なのにさー祥太郎があんな事言い出してくれたお陰で、兄貴は自分のポリシー曲げちまうし」
「だからあなたはどうするのかって、聞いてるのですが」
ああ、どうして話が核心へと近付かないのだ。
まるで慎吾と話をしている様な気がしてしまうぞ?
あ・・・・・・・・慎吾と隼人は何だか、似ていなくもないな。
「だから、そこなんだって!!」
「何が、そこなんですか」
「俺は白雪を抜かしたいなんて思ってねぇのよ。のにさ、兄貴は一番取るって頑張ってんじゃん?俺も真似したら、白雪抜く事になっちゃうし。だからって、2番で良いやって思ったら今度は俺のポリシーを曲げなきゃいけなくなっちまうし!」
「別に曲げたって、いいのではないですか?」
何も無理やり、直哉の真似なんてする必要はないのだという事を。
どうしてこのガキ大将は気が付かないかな。
「天音さん?」
「隼人は隼人の思うようにしたらいいじゃないですか。確かに直哉の真似をして今回の試験で主席を狙うのならそうれはそれで、いいでしょう。でも、隼人が白雪を抜きたくないと思ったのならそれでいいじゃないですか」
「・・・・・・・・・・・・・・・・だけどさ」
「まぁ、あなたが考えて決める事ですけれど」
私は敢て突き放すような言い方をした。
だって、隼人が自分で気が付かなければいけないのだ。
いくら直哉の真似をしていた所で、自分の人生は自分の物でしかないのだから。
すると突然、隼人が立ち上がった。
「くそっ、ムカツク!全部祥太郎が悪いんだ!祥太郎の馬鹿野郎っ!!!」
「何?今誰か、僕の事呼んだ〜?」
隼人が叫んだその瞬間、がらりと開いたドアからぴょこんと祥太郎先生が顔を覗かせた。