2005年 1月 8日(土)

気持ちの行方 SIDE 慎吾2

慎吾を慮って新年会と言う名目で飲み会を開いた雪紀と直哉だったが…。
すでに後悔が入っていた。

今日の慎吾はいつもの陽気な酒が嘘のように、ぐちぐちとした絡み酒だったからだ。

「天音…酷いと思わへんか? あーんなキレイな着物着て、それ見せびらかすだけで、俺のためじゃないなんて〜!」
「うんうん、全くだな。」
「あーもう、いつまでもうるせえなあ、ガンガン飲んでとっとと潰れちまえ。」
「おい、雪紀…っ! 飲ませ過ぎだって!」
「だってこんな愚痴野郎、いつまでも相手してられねえよ。」

雪紀はおもしろくなさそうに自分のロックを煽った。

「まったく、おまえの方こそまめだよなあ、直哉。よくこんなのいつまでも宥めていられるもんだぜ。」
「ふ…。これくらいのことで音を上げてて、祥先生の相手が勤まるかよ。」
「祥太郎先生と言えばー!」

急に据わった目をした慎吾が直哉を見上げた。

「いつか聞こうと思ってたんや! ほんまのとこ、祥太郎先生とはどこまで行っててん?」
「なんだよっ! 藪から棒に!」
「ふふふ、無粋だな慎吾。最近直哉の眉間の皺がすっかり影を潜めているだろう?
これは絶対、行きつくところまで行ったに決まってる!」
「おい雪紀っ! 余計なこと言うな!」

慌てて制止する直哉。しかしいい加減酔っ払った慎吾は大喜びだ。

「そっか! そやろな! 直哉センセの為に、わざわざ二人っきりになれるマンション誂えたんやもんな!
これでどもならんかったら、ビョーキに決まっとるな!」
「…こら雪紀!」
直哉はニヤニヤ笑っている雪紀の襟首を捕まえた。

「おまえなっ! せっかくの俺の努力を無にするつもりかよ!」
「なにが? なんの努力だって?」
「おまえにばれるのは仕方ないとしても、他のヤツらにはまだばらすわけには行かないんだよ!」
ひそひそと声を顰めていた直哉は、いっそう声を低くした。

「祥先生には、誰かにばれたらもうそれまでだって言われてるんだ!
祥先生は真面目だからな。本当に別れ話を持ち出されかねないんだぞ!」
「なーんだ、やっぱり行きつくところまで行ったのか。」
「あったりまえだろう! お互い好きあっているんだ! 自然な流れじゃないか!」

「なに二人でコソコソ言うてんねん!」

酒臭い大男ががばぁとのしかかってきた。

「二人とも、ちいとも飲んでないやないけ! 付き合い悪いんちゃうか!
ほれ! 飲め! 遠慮するな!」
「誰が遠慮するか! 俺んちの酒だぞ…ぎゃ!」
「うわっ! なにすんだこのバカっ!」
「ひゃははは! おー! 目にしみるで〜!」

ようやく直哉の奮戦のあとが見られたためだろうか、慎吾はいきなり復活した。
そして、その辺にあったビンを数本まとめて鷲掴みにして、自らと雪紀と直哉の頭に振りまいたのだった。

「うえっ、酒くせー! ふざけんなよ、この酔っ払い!」
「なにおう! 酒飲んで酔っ払わない方がよっぽど変態や! 
天音が酔うたとこなんて見てみい! めっちゃ色っぽくてきれいやで!
咲良なんか酔うてもただ酢だこみたいに赤なるだけやろ!」
「ば…っか言え! あれはあれなりに色気が出るんだ! 目が潤んで可愛くなるんだぞ!
酢だこは祥太郎先生じゃないか!」
「祥先生は…たしかに酢だこになるだけで、なーんにもかわらないんだ、あの人は…。
一升あけても、ぜんぜんケロッとしてるんだぜ。つまんねえ…。」
「ぎゃははは! それは完璧に変態や!」

3人の酒宴の風向きが、俄かに変ってきた。