| 2005年 1月 9日(日) |
もはやSIDE慎吾でもなんでもない酒宴
頭から浴びせられたアルコールが意外に効いたらしい。
直哉はぐらりと視界がゆがむのを感じた。
「だいたい咲良は…いつまでたっても子供なんだよ! ちっとも大人の遊びを理解してねえ!
この間なんてちょっとふざけて縛ったら、もうしくしく泣き出すんだぜ!」
「……どうせ泣こうがなにしようが、することだけはするんだろうが。」
「ふふふ、あたりまえだ。」
「ぎゃははは! 雪紀も変態や!」
さっきから上り調子でご機嫌な慎吾はのけぞって笑っている。
「天音なんてその点、容赦ないで! うっかり縛らせて〜、なんて言おうもんなら、逆に縛られて叩かれてまうわ!
この間なんてさらに目隠しされて! 動けない俺の上に天音が乗ってきて! う〜〜〜っ! 思い出しただけでも奮い立つわ!」
「このバカッ! こんなところでそんなもん立たすな!」
「だから、そーゆー所が咲良は子供だって言うんだ。
そうか、今度はそう言うのも仕込んでやらなきゃ。
自分で…できるまで…ふふふふふふ…。」
「ちぇっ、祥先生なんか、うっかり縛ったら、絶対ふてくされちゃって2度とさせてくれないに決まってる!」
「ひゃはははは! 直哉、尻に敷かれとるで〜!」
「おまえだってそうだろが!」
すっかり自分の世界に入ってしまった雪紀を放りだし、直哉は慎吾に噛みつく。
しかし、いつものハイテンションに返り咲いてしまった慎吾は、ただ笑い倒すだけでちっとも食いついてこない。
「俺はな〜、天音の尻の下なら敷かれて本望なんや! 実際いい尻やで! あれはほんま!
俺とおんなじ尻とはどうしても思えん! つるつるでむっちりしてて!
あ、むっちりいうのは天音にはナイショやで! またゾロ痩せる〜言い出すと厄介やねん。」
「咲良のはむっちりなんてしてないぞ! どっちかというとシコシコしてるな!」
だけどその引き締まった感じがいいんだ! しりっぺたにきれいな笑窪ができてな! 産毛が光って青い桃みたいだ!
本当に…歯を立てて思いっきり噛り付きたくなるんだぜ!」
「いいな………俺も一回でいいから、祥先生の尻に敷いて欲しい……。」
「ひゃーははは! 直哉! 哀愁漂うとるで!」
「それはそうと、慎吾、おまえ随分天音と長いよな。よく飽きねえな。」
「飽きるもんかい! 雪紀は天音の手練手管を知らないからそんなこと言うねん!
もうほんま! 俺なんかひいひい言わされっぱなしやで!
あ、もちろん普段は俺が天音をひいひい言わしてるんやけどな!
あっ! そういえば!」
慎吾は不意に真顔になって直哉に擦り寄って来た。
「思い出した! あれどうなった? あれあれ!」
「あれ? あれってなんだよ!」
「だからアレやがな! 祥太郎先生バズーカ説!
雪紀やったっけ? 体の小さいもんはお道具の立派さで勝負するもんや、ゆうとったの!
んで、どうなんや! 祥太郎先生、持ち物はビッグキャノンてほんまか?」
「おっ! 俺も聞きたいな! あの体で俺たちより立派だったら…はっきり言って笑えるぜ!」
「ぎゃははは! 俺のより大きいんやったら、祥太郎センセ、毎日引きずって歩かなならんやろ!」
「ばっ…! 馬鹿言えっ! 可憐な祥先生が、なんでそんな馬並なんだよ!
ごく普通だ! 俺の手の中にちょうど納まるくらいの…可愛らしいモノだよ!」
「なーんや、つまらんのう。」
慎吾は急に興味をなくしたように直哉を突き飛ばした。
「祥太郎センセが引きずって歩くの見たかったのに〜!」
「いくらなんでもそんなのあるか!
大体俺より大きかったらって、慎吾、おまえ図々しいぞ!
おまえだってマグナムって言ってるのはおまえだけで、実は悲しい粗チンなんじゃないのか?」
「ぬわにおう! 粗チンはおまえやろ雪紀! だから咲良とか、チビ狙いなんや!」
「ふざけるな! それじゃ直哉なんて爪楊枝サイズじゃねえか!」
「誰が爪楊枝だ誰がっ!」
最初からへべれけの慎吾はともかく、雪紀と直哉は、自分のたがが外れつつあるのを感じていた。
しかし、急に回り始めた酔いが、どうしても行動を制御できなくさせている。
「ようし、そんなら比べっこや! 今この場に出して大きさ比べてみよ!
さあ! はよ出し! 出せんのか? それとも出してんのに、見えないほどの粗チンなんか!?」
「ふざけんな! そんなら出してやる! ほえ面かくなよ!」
「ちょお待ちぃ! 定規! 雪紀、定規持ってこいや! おまえら用に!
俺のは2メートルのメジャーやなきゃ測れへんで!」
「へん! そんなほっそいのかよ、おまえのは! 役立たずじゃねーか!」
ぎゃあぎゃあといがみ合ううちにも、いつのまにか定規が用意され、3人は立ちあがった。
足ともがおぼつかないお互いを、支え合って洋服を取る。途中で面倒くさくなって、なぜか3人とも全裸だ。
「さあっ! じゃあ測るぞ! 慎吾からだ!」
「あーっ! ちょいまち! ずるしっこ無しや! 雪紀手ぇが震えとるやないけ!」
「おまえだってそうだろ! 今更ごまかすなよ!」
「それでは私が測りましょうか。」
静かな声がした。
まず最初に反応したのは雪紀だった。
びくぅと竦みあがるといきなり直立する。その姿を見て、直哉が次に反応した。
二人は慌てて衣類を探す。しかし調子に乗って蹴り飛ばしてしまったので、ちょっとやそっとでは手の届かないところまで飛んでしまっている。
最後まで気付かなかったのは、慎吾だけだった。
「なんや、二人とも。急に静かなって!
ようし、この間に俺が測った……る…?」
「遠慮なさらずに。私が測って差し上げますよ。
私も医者の端くれですから、酔っ払いの皆さんが測るよりは、よほど正確に測れますよ。」
「さ、さ、さ、佐伯さ…!」
慎吾は1メートルほども飛びあがった。
雪紀とは幼馴染の慎吾だ。直哉ほどではないにしても、それなりに佐伯氏の厳しい躾を受けた過去は記憶は、生々しく持っている。
「全く、3人ともご立派になったものですね。鬼のいぬ間に命の洗濯ですか?
新年会だと伺ったので差し入れに来ましたら、なんですか、この体たらくは!
若! お友達は所帯を持たれると言うでは有りませんか。そんなお年になって恥ずかしいとお思いでないのですか!
3人とも、そこに正座!」
ビシッと板の間を指差されて、3人は慌てて膝を並べた。
そうして白々と夜が明けるまで、長い長い佐伯のお説教は続いたのだった。