2005年 2月 2日(水)

思った通り

「おい天音!豆まきって一体、何の事なんだ!」

朝一番。
思った通り、直哉が生徒会室に乗り込んで来た。
・・・・・・・・・・しかし、毎日の様にここに顔を出している私も私だと思うが、乗り込んでくる直哉も直哉だな。
教室だとか、その他。
行こうと思えばそれこそ広い校内だ。
落ち着ける所は幾らでもあると言うのに・・・・・・どうしてかここへ来てしまう。
習性と言ってしまえばそれまでか。

「豆まきと言えば、豆まきでしょう」
「だから。何で急に豆まきなんだ!」

やっぱり昨夜、祥太郎先生は直哉にお強請りでもしたのだろうか。
しかも大事な所は全部はしょって。

『ねぇ直哉君!豆まきしたい、豆まきしよう!』
何て所だろう。

それこそ豆鉄砲でも食らったかのような、直哉の慌て振りが面白いぞ。

「咲良が、明日・・・全校総出で豆まきをしたいと言ったんです。そうしたらその場に居合わせた祥太郎先生が、僕もしたいって仰ったんですよ」
「・・・・・・・・そうなのか」
「ええ、そうなんです」

嘘は言ってないぞ、断じて。

「で、直哉は何をそんなに慌てているんですか」
「・・・・・・・鬼が」
「鬼が?」
「翔先生が、きっといきなりの事じゃ鬼のなり手がいないだろうから」
「いないから?」
「鬼をやってくれって」
「直哉に?」
「そうだ、俺に・・・・・・・・」

俺に、と言ってから。直哉は呆然と天井を仰いでしまった。
流石は祥太郎先生だ。
直哉に鬼をやってくれなんて言える人間は、祥太郎先生以外に唯の一人もいないぞ。

「・・・・・やるんですか?鬼」
「やりたい訳ないだろうっ!何で俺が鬼なんだ!他にいるだろう、鬼をやりたがる奴くらい!」
俺はやりたくないぞ!
叫んだ直哉が哀れに思えてしまう。
だが祥太郎先生のお願いなのだ。先生が直哉に「鬼」をやって欲しいと仰ったのだ。
やればいいじゃないですか、鬼くらい。
せいぜい豆をぶつけられて、それでお終いなんですから。

「そんなものやりたがる人間、いる筈ないでしょうに・・・・・」
「いる!絶対にいる!雪紀でも隼人でも誰でもいいじゃないか!俺は嫌だからな!全校生徒に追い掛け回されて、豆をぶつけられて逃げ回るなんてそんな情けない姿・・・翔先生に見せられる筈ないだろうっ!」
「だって翔先生が仰ったんでしょう?直哉にって。第一今から鬼役を探すのなんて無理に・・・・・」
決まってる、と言おうとして。
いや、いた。
やりたがる人間は、確かにいた。それこそ大喜びで。

「・・・・・・・・・天音だって、思っただろう?適役がいるじゃないか。それこそ喜んで校内中、駆けずり回ってくれる奴が」



「あれ?天音?直哉???何しとったん?」
教室行ってもおらんかったから、探してもうたやん。

へらへら笑いながら「適役」がのこのことやって来てしまった。

「よう、慎吾」
「なんやねん、直哉」

にたり、と笑った直哉がぽん、と慎吾の肩を叩いた。

「豆まきの鬼、やらないか?」

満面の笑顔で直哉がそう言った。

「慎吾、そんなものは!」
「ええで〜?何で鬼なんか分からんけど。おもしろそうやん〜」
「んじゃ、決まりな!後、水泳部の後輩、何人か集めろよ」
「おう?」

そんなものやらなくて結構、と言いたかった私の言葉は完全に無視されてしまった。
明日の騒動が目に見えるようだ。