2003年 8月 29日(金)

自分観察日記1日目

朝目覚めると、もう8時2分だった。

正直遅刻すると思ったが、何故だか焦ってはいなかった。

間に合うだろう、またタカをくくっていた。

どうやら昨日から今朝までで著しい変化は現れていないようだ。


無事遅刻せずに学校に着き教室に入るが、とても久々に友人に会うような顔ではなかった。

確実に「何かあった」なと思わせるような表情・足取りだったと友人は後で語っている。

その後事情を知る友人らに一体どうだったのかと聞かれるが、真相は何も言わずただ

「全部片付いたら話す、ごめん」

の一点張り。申し訳ないと思ったが、話す気にはなれなかった。

もっと苦しまねばならない。

誰かに話して楽になろうなどという甘い考えは、今かなぐり捨てなければならないのである。

そういう感情は、今無駄なのだ。


防災訓練というつまらない行事を終え、学年集会でグダグダ説教を垂れられ、HRを終えて下校だ。

昨日言ったとおり、海のお世話になろうかと思っていたところ、麻雀に誘われる。

正直行きたいなどとはチリほどにも思わなかったが、気が紛れそうだし、何か見つける部分もあると思ったので参加する事にした。

部活に来てくれということで行ったのだが、足は到底進まなかった。

むしろ「お前が呼んだんだからお前が来いよ」という、黒い感情が湧きあがっていた。結局部活へ行ったのだが。

そこには会いたくないヤツがいた。

だから出来るだけ会話をしないように、話を振られないように、まるでいつも通りのように、「普段」の自分でそこにいた。

その後少し担任に話があったから退室。荷物を置いていく。

担任と進路についての中間報告(方針決定)をした。

担任は快く納得してくれて、とても嬉しかった。進路についての不安が、また一つ減った。

「ぽん」と肩を叩かれ、少しだけ元気が出た。「頑張れ」って意味だと思うが、違う意味で受け取った。


部活へ戻ると、随分人気が多かった。

程なくして入電、集合とのこと。

その後はひたすら麻雀をやる。

今日も当然「遊び」でやったわけなのだが、一人勝ち状態だった。

別に気合を入れているわけではない、別に勝とうと意気込んでいるわけでもない。

当然「楽しんで」やっていたわけなんだが、今日流れを運んできたのは、黒い力のような気がしてしょうがなかった。


麻雀が終わって、夕食を摂ることになる。

空腹だったのかそうでないのかは分からなかったが、「奢るよ」と言われても食べる気に全くなれなかった。

席につき、おしぼりをもらう。

執拗に拭いていたのは気のせいだろうか。

だけれど、キレイになるのは手だけだった。

麻雀の事を思い返してみたが、楽しくなかった。

実は楽しくなかった、憂鬱だった。

単純に「遊び」であって「勝負」でなかったからではないと思う。

果たして、何度ポンやロンをぼーっと見過ごしただろうか(視線は外さなかったのに)

それだけ、考えたかったのだろうか。


「海へ行こう」という申し出があったから、海へ向かった。

途中、プリンスを見かけるのだが、見ないフリをした。

制服のまま足まで浸かってみたりして遊んだ。

最初は絶対濡れたくなかったのに、気付けば「濡れちゃってもいいか」なんて考えが頭を支配する。

何とか理性がそれを許さなかったが、そこまで海は呼んでいたのだろうか。それとも呼んでいるのはこちらか。

いやに白波が立っていた。海は何故だか、全て分かってくれているような気がしてなんだか安心した。

少し舐めてみる。最後に舐めたときよりも、涙の味に近かった。


しばらくして、衝撃的事実を知ることになる。

一緒に来た2人を見ているうちに、自分を投影してしまう。

我に返ると、妙に泣けてきて、ごまかしたかったから

「懐かしいなあ」

とか

「いいよねぇ若いって」

とか

なんて白々しく言った。

帰り道、一人で考えていると

「せっかく3人なんだか、3人で話そうよ」

とか

「一緒に話そうよ」

とか言ってくれる。

嬉しかったけど、独りで考えたかった部分もあって。

ふとプリンスを見上げると思い出した。

「ねぇ、あのホテルのライト、何に見える?」

言おうと思った。

でも泣きそうだったし、何にも見えなかったから言わなかった。

プリンスの近くを通るときも、見上げずにはいられなかった。

何故か、「目を背けちゃいけない」と思い、最上階を睨みつける。

あの時自分に向けられた言葉たちが、再度エコーして襲い掛かる。

たまらず目を背けてしまった。事実から目を背けたのに、エコーと泣きたい感情は止まなかった。

「どうしたの?」

と聞かれ、作り笑いをするようなことがなければ、きっとまた大泣きしてしまうところだった。

けれど、プリンスを通った後も、あの言葉たちが何度もエコーする。

涙が何度もこぼれそうになるが、その度「どうしたの?話そうよ」という言葉に救われる。


泣いてはいけない。

泣けば、涙の粒とともに苦しみが流れてしまうような気がして。

まだ、自分は甘い甘いぬるま湯に浸っているから。

しばらくは、苦しい思いをさせよう。


「んじゃぁ3人で話そっか」

と言ったものの、結局2:1に別れてしまった。

仕方ないから、自問自答して時間をやり過ごす事を思いつく。

気がついたら駅で、早く独りになりたいのと、邪魔者は消えておきたかったから

「また今度な」

というとびきりの笑顔で見送ってやった。



自分の価値って何だろう?

自分の存在意義って何だろう?


運命の選択肢は決めた。

後は、自分の努力だけだ。

ひょっとしたらコレは、とても酷な選択かもしれない。

そしたら謝ろう。

過ぎてしまった事だし、もう償う事もできないんだけど、それでも。

気が済むまで償おう。



規則って何のタメにあるんだ?

破るため、だろ?

じゃあお前は、約束も破るためにあるって言うのか?

守るため、だろ?



「約束も守れないのは、最低だ」

と冷たく言い放ったのは私。

そして、冷たく言い放たれたのも私。


明日は土曜日。

海は一体何を教えてくれるだろうか。







一日目・終




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